仮面城(日文版)-第20部分
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「あ、こ、これは……?」
「警部さん、警部さん、あなたはこの男を知っているのですか、だれです、これは……?」
「これは……これは、加藤宝作老人の秘書です」
「宝作老人の秘書……?」
香代子と金田一耕助が、ハッと顔を見合わせたとき、
「アッ、あんなところにだれかひとが……!」
そう叫んだのは文彦である。その声に一同がハッとふりかえると、へやのすみに、さるぐつわをはめられ、手足をしばられて、ぐったりと気を失っているのは、まぎれもなく宝石王加藤宝作老人ではないか。
落ちた仮面
「ああ、知らなかった、知らなかった。わしの秘書があの恐ろしい銀仮面とは、きょうのきょうまで知らなかった……」
それから間もなく、警官たちのかいほうで、息を吹きかえした宝作老人は、銀仮面の顔を一目見ると、さも恐ろしそうに身ぶるいをして、両手で顔をおおった。
それを聞くと、香代子と金田一耕助は、うたがわしそうに目を見かわせたが、そのときだった。
「ちがいます、ちがいます。銀仮面はその男です。その男が秘書をうって、それに銀仮面の|衣装《いしょう》を着せたのです」
とつぜん、へやのなかから意外な声が聞こえたので、一同がびっくりして、キョロキョロあたりを見まわしていると、だしぬけに、正面にあるあの大時計の、振り子のドアがひらいたかと思うと、なかからおどりだしたのは、なんと三太少年ではないか。
「ああ、三太、それではきみはさっきから、いちぶしじゅうのようすを見ていたんだね」
「はい、金田一先生、ぼくはすっかり見ていました。そいつが部下をうち殺し、その手にピストルをにぎらせ、それから、いままでじぶんの着ていた銀仮面の衣装を着せたのです。そしてじぶんでさるぐつわをはめ、手足をしばって、気を失っているようなまねをしたんです。だから、銀仮面とはそいつなんです。そのおじいさんなんです」
三太にきっと指さされ、さすがの加藤宝作老人も、ハッと顔色をかえたが、すぐ、鼻の先でせせら笑うと、
「なにをばかな! 警部さん、あんたはまさかこんな子どものいうことを、ほんとうにはなさるまいな。かりにもわしは宝石王といわれた男だ。それを銀仮面などと、なにをばかな!」
はきだすような宝作老人のことばに、警部もちょっととまどいした感じだったが、そのときまたもや、意外なところから意外な声がふってきた。
「いいや、さっきのようすを見ていたのは、その子どもばかりではない。わたしたち三人もここから残らず見ていたぞ」
その声に、ギョッとしてふりかえった一同は、声の主の奇妙なありかに気がつくと、おもわず大きく目を見張った。
そのへやの壁に、五、六十も仮面がかかっていることは、まえにも話したが、その仮面のなかに、大野健蔵、秀蔵のきょうだい、それから文彦のおかあさんの顔もまじっているのだ。あまりたくさん仮面がならんでいるので、ほんとうの顔が、壁にくりぬいたのぞき穴からのぞいているのを、いままでだれも気がつかなかったのだった。
「これ、銀仮面、おまえはいつも部下をこのへやへ呼びあつめては、お面のうしろにくりぬいたのぞき穴から、こっそりお面をかぶった顔だけだして、部下のようすをさぐっていたろう。ながらくここにとじこめられているうちに、わたしはその秘密を知ったから、きょうはぎゃくにこの穴から、おまえのようすを見ていたのだ。さあ、もうこうなったらしかたがない、なにもかも白状してしまえ!」
長いあいだのうらみをこめて、壁の上からハッタとばかりに、宝作老人をにらみつけたのは枯れ木のようにやせほそった秀蔵博士。そのとたん、まっさおになってふるえている、宝作老人の両手には、ガチャンと手じょうがおりていた。
ああ、日本一の宝石王とうたわれた、加藤宝作老人が銀仮面とは、なんという意外なことだろうか。
思えば恐ろしいのは人間の欲である。
宝作老人もひとなみはずれた欲さえ持っていなかったら、あんな悪人にならずにすんだだろうに!
それはさておき、銀仮面がとらえられたので、文彦をはじめとして、大野きょうだいや香代子のうえには、いまはじめて、平和の日がおとずれた。
文彦は秀蔵博士の子どもとわかったが、しかしやっぱりいままでどおり、竹田家の子としてやしなわれることになった。そしてその家には、ときおり秀蔵博士がおとずれては楽しいひとときをすごしていくのだ。
秀蔵博士は日ましに健康をとりもどし、血色もよくなってきた。そして、健蔵博士と力を合わせて、人造ダイヤの研究も、着々とすすんでいるということである。
だから、いまにダイヤが大量に製造されて、それによって日本が、世界の舞台にのりだすのもそう遠いことでないにちがいない。
三太少年は金田一耕助にひきとられて、いまではあっぱれ、少年探偵になっているということである。
悪魔の画像
赤色の剑
「ああ、これは|杉《すぎ》|勝《かつ》|之《の》|助《すけ》の剑坤省
おじさんはそういって、くすんだ銀色のがくぶちにおさまった、大きな油剑韦蓼à恕ⅳ沥陇阮啢颏瑜护俊
その剑趣いΔ韦稀ⅳ郡埔互岍‘トル五十センチ、よこ一メ去胧互螗沥猡ⅳ恧Δ趣いΑ⒋螭视徒}だが、いちめんにベタベタと、赤い色がぬりつけてあって、なんとなく気味の悪いかんじなのだ。
「おじさん、杉勝之助ってだれ」
|良平《りょうへい》が聞くと、
「杉勝之助というのはね。戦争中に、若くして死んだ天才画家なんだ。世間から赤の画家といわれるほど、赤い色がすきで、どの剑蛞姢皮狻⒊啶どい沥幛螭衰佶骏佶郡趣踏盲皮ⅳ毪椁工挨铯搿¥ⅳⅳ浃盲绚辘饯Δ馈¥长长松激违单ぅ螭ⅳ搿
と、おじさんはいくらかじぶんの|眼《がん》|力《りき》をほこるように剑斡蚁陇韦工撙蛑袱丹筏俊R姢毪取ⅳ胜毪郅嗓饯长恕⑸紕僦蚊蓼àⅴ愆‘マ字でかいてある。
「おじさん、杉というひと知っているの」
「いや、特別こんいだったわけじゃないが、なにかの会で二、三度あったことがある」
良平のおじさんは、|清《し》|水《みず》|欣《きん》|三《ぞう》といって、いまうりだしの小説家だが、いたってのんきなひとで、まだおくさんもいない。そして、じぶんの姉にあたる、良平のおかあさんのところに、同居しているのだ。
良平のおとうさんは、さる大会社の重役だが、仕事の関係で、しじゅう旅行しているので、家がぶようじんだからと、こちらからたのんで、欣三おじさんにいてもらっているのである。
良平は、このおじさんがだいすきだった。
小説家のなかには、ずいぶん気むずかしいひともあるということだが、欣三おじさんにはすこしもそんなところはない。学生時代、テニスの選手だったというだけに、いかにもスポ磨蕙螭椁筏ぁⅳ丹盲绚辘趣筏郡窑趣恰⑹耸陇韦窑蓼胜趣胜伞⒘计饯蛳嗍证恕ⅴ悭氓粒堠‘ルなどをしてくれるし、また、いままでに読んだ、外国のおもしろい小説の話をしてくれることもある。
おじさんは夕がたになると、町をさんぽするのが日課になっていたが、そんなとき、良平のすがたが目につくと、
「おい良平、おまえもいこう」
と、いつもきっとさそうのだった。
良平の住んでいるのは、郊外にある、おちついた学園町だったから、夕がたのさんぽなどにはおあつらえの場所だった。良平の一家は三月ほどまえに、そこに家を新築して、ひっこしてきたばかりなのである。
そして、その日も良平は欣三おじさんにさそわれて、さんぽのおともをしたのだが、そんなとき、おじさんがかならずたちよるのは、駅前にある古道具屋であった。
古道具屋というのはおもしろいところだ。ミシンだの蓄音機だのという、文明の利器があるかと思うと、古めかしい仏像だのよろいだのがある。お琴があるかと思うとオルガンがある。ベッドや洋服だんすのような、大きなものがあるかと思うと、豆つぶほどのお人形があったりする。そして、それらのものがふるびて、くすんで、ほこりをかぶって、ゴタゴタとならんでいるところは、なんとなく、神秘的なかんじがするのだった。
おじさんはときどきそこで、へんな皿や花びんを買っては、掘りだしものをしたととくいになっていたが、いま、杉というひとの剑蛞姢膜堡郡韦猡饯喂诺谰呶荬坤盲郡韦扦ⅳ搿
それは西洋の悪魔らしく、ツノのようなふさのついたずきんをかぶり、ぴったり肉にくいいるようなじゅばんを着て、おどりながら、笛を吹いている全身像なのだが、じゅばんもずきんもまっ赤なばかりか、バックまでが、えんえんと燃えあがる火の赤さなのだ。
良平はなんとなく気味が悪くなって、
「おじさん、おじさん、杉というひとはどうして死んだの。病気だったの?」
とたずねると、おじさんは剑摔啶沥澶Δ摔胜盲皮い毪韦ⅳΔ铯韦饯椁恰
「ううん、病気じゃない。自殺したんだ」
「自殺……?」
良平が目をまるくしていると、
「そうだ。気がちがって自殺したんだ。いかにも天才画家らしいじゃないか」
と、おじさんはなおも熱心に、その剑艘娙毪盲皮い郡
「そうだ。ぼくはまだ、ねえさんに、新築祝いをあげてなかった。ひとつ、これを買っておくることにしよう。応接室の壁に、ちょうど、てごろの大きさじゃないか」
と、奥のほうへいきそうにしたので、びっくりしたのは良平である。
「おじさん、およしなさいよ。この剑菸钉瑦櫎い琛¥饯欷俗詺ⅳ筏郡窑趣谓}なんか……」
「アッハッハ、良平は子どものくせに、いやに迷信家だね。そんなこと、なんでもないさ」
店の主人にかけあうと、ねだんもてごろだったので、金をはらって、あとからとどけてもらうことにしたが、そのときだった。
表からはいってきた幞亭文肖ⅳ饯谓}を見ると、びっくりしたようにそばへより、しばらく、熱心に見ていたが、やがて主人にむかって、
「きみ、きみ、この剑悉い椁汀¥铯郡筏摔妞氦盲皮猡椁い郡い韦坤
とたずねた。主人はこまったように、
「いえ、あの、それはたったいま、このかたにおゆ